コイルの周波数特性解析の事例を紹介します。
解析対象は幅 7mm、厚さ2.5mmの矩形ワイヤーを上に示すように、20回巻きしたコイルです。
材質は銅です。物性値として、電気抵抗率 1.673 × 10-8 (ohm m) を入力しています。
本事例では、計算資源を多く使わずに、より精密に解析するために、右図に示す1/4モデルの計算も実施しました。
フルモデルで80万要素、1/4モデルで60万要素、共に四面体1次要素と三角柱1次要素を使用して、モデル化しています。
右図(上)に示す回路を設定しまた。磁場解析の場合、解析結果は右下図のような回路構成に従います。
● 解析結果
表1、2にインピーダンス、抵抗、インダクタンスの計算結果を示します。
図1にインダクタンスの周波数特性を示します。実験結果も合わせて示します。
実験結果と良い一致を示しています。
図2に抵抗の周波数特性を示します。実験結果も合わせて示します。
実験結果と良い一致を示しています。
インピーダンスの周波数特性を図3に示します。
抵抗成分では、解析結果と実験結果はやや異なる場合も見られましたが、抵抗成分は絶対値が小さいため、インピーダンスの大きさにはほとんど寄与していません。そのため、インピーダンスの、実験結果との誤差は20 (Hz)では10%を超えますが、それ以外では、5%以内に収まっており、グラフでは、ほぼ一致した結果が得られています。
同時に、図4、5に示すような評価も、JMAGでは可能です。
図4右上に示す、コイルを分割する半透明プレート断面における、コイル断面の磁束密度(実効値)分布を示します。表示レンジは磁束密度最大値から、その1/100の大きさまでを対数で表示しています。低周波では、コイル内部がほぼ一様に、最大磁束密度の分布となっていますが、高周波側ではコイル内側、上下端付近に最大の磁束密度分布が見られます。
図5に電流密度分布図を示します。表示レンジは電流密度最大値から、その1/100の大きさまでを対数で表示しています。周波数が低い場合、電流はコイルにほぼ一様に流れていることが確認できます。一方、高周波の場合、導線の表皮部分に電流が流れる様子がわかります。