OpenCapのデータを使用したAnyBodyによる筋骨格モデル解析

OpenCapのデータを使用したAnyBodyによる筋骨格モデル解析

本事例で使用しているOpenCapで取得したデータを変換し、変換したデータに対応したAnyBodyの解析用モデルの自動生成するTRC2AnyBodyはAnyBodyの保守契約を継続していただいているユーザー様は無償でご利用いただけます。ご利用を希望されるユーザー様は以下のAnyBodyサポートページよりダウンロードをお願いいたします。

  • TRC2AnyBody : 姿勢推定WebサービスOpenCapで取得したTRCの変換&変換データに対応したAnyScript自動生成

  https://www.terrabyte.co.jp/AnyBody_S/?page_id=4756


概要

近年、従来から用いられている光学式モーションキャプチャ、慣性式モーションキャプチャに次ぐ選択肢として、マーカーレス・モーションキャプチャが普及してきています。マーカーレス・モーションキャプチャには様々な選択肢が存在しますが、非営利目的での研究・教育に限り無料で利用可能なマーカーレス・モーションキャプチャとしてOpenCapと呼ばれるクラウドベースのサービスが存在します。本ページでは、OpenCapで取得したデータを用いたAnyBodyによる筋骨格モデル解析について紹介します。


OpenCapとは?

OpenCapは、スタンフォード大学のScott Delp教授のグループによって開発されたクラウドベースのマーカーレス・モーションキャプチャ・サービスです。Wi-Fi通信が可能な環境下であれば、1台のPCと2台のiPhoneだけで3次元的な身体運動データの計測が可能となっています。他のモーションキャプチャによる計測に比較すると、簡素なシステムで3次元的な身体運動データの計測が可能であり、精度検証においても計測にかかる時間的・金銭的コストに対しては十分な精度が得られることが確認されています(Uhlrich, S. D., et al. 2023、Martiš, P., et al. 2024)。OpenCapが無料で利用可能な範疇は「非営利目的での研究・教育」に限定されていますが、これまで動作データを取得するために必要な手続きが大幅に簡略化されつつ、ある程度の精度での計測も可能であることから、革新的な動作分析ツールであると言えます。

 OpenCapによる身体運動データ取得のイメージ

注意
「非営利目的での研究・教育」以外の用途でOpenCapを利用したい場合には、商用版OpenCapサービスをサポートしているModelHealth社を通じてライセンスを購入する必要があります。OpenCapのライセンスに関する詳細は、OpenCapの利用規約をご参照ください。

 ・Tearms And Conditions – OpenCap
  https://www.opencap.ai/terms-conditions


OpenCapで取得したデータをAnyBodyで使う方法

OpenCapで取得した身体運動データは、TRCという独自のフォーマットをもつテキストファイル形式として出力されます。AnyBodyはTXT・CSV形式のテキストファイルの読み込みには対応していますが、独自のフォーマットをもつTRC形式ファイルを、そのまま読み込むことはできません。AnyBodyでTRC形式ファイルに格納されている身体運動データを利用するためには、AnyBodyで読込可能なC3D・BVH・TXT・CSV形式のいずれかにTRC形式のファイルを変換する必要があります。TRC形式ファイルの変換は、モーションキャプチャ装置に付帯するソフトウェアや無料の身体運動データ・ビュワーなどを用いて実施することも可能ですが、解析したいデータが多い場合には煩雑な作業が発生することになります。この問題を解消するために、弊社ではAnyBodyの保守ユーザー様向けに以下の2つの機能を有するTRC2AnyBodyをご用意しております。

  • TRC形式ファイルをAnyBodyで読込可能なC3D形式ファイルへ変換する
  • 変換したC3D形式ファイルに対応したAnyBodyの解析用モデルの自動生成する

TRC2AnyBodyを用いることで、データ変換の煩わしい作業から解放され、AnyBodyによる筋骨格モデル解析に集中することが出来ます。

TRC2AnyBodyによるデータ変換・AnyBodyモデルの生成の流れ


解析事例

OpenCapのホームページにて公開されているサンプルデータ(https://app.opencap.ai/session/7272a71a-e70a-4794-a253-39e11cb7542c)の1つである「run2.trc」を対象として、TRC2AnyBodyによるデータ変換・モデル生成を行い、AnyBodyによる筋骨格モデル解析を実施しました。なお、OpenCapのホームページで公開されているサンプルデータには床反力データが存在しないため、AnyBodyに搭載されている反力推定機能を用いて床反力の推定を行ったうえで、筋骨格モデル解析を実施しています。

OpenCapのサンプルデータを用いたAnyBodyによる筋骨格モデル解析の様子

 

AnyBodyによる筋骨格モデル解析の結果として得られた、筋活動量・関節負荷の一部を以下に示します。

筋骨格モデル解析によって推定された筋活動量

筋骨格モデル解析によって推定された関節負荷

 

筋骨格モデル解析によって推定された筋活動量・関節負荷は、先行研究(Voloshina, A. S., et al. 2015、Bergmann, G., et al. 2014)で報告されている表面筋電図で計測された筋活動量、ロードセルで計測された関節負荷と値・パターンが類似しており、ある程度の妥当性を有する解析結果となっていることが考えられます。


参考文献

  1. Uhlrich, S. D., Falisse, A., Kidziński, Ł., Muccini, J., Ko, M., Chaudhari, A. S., Hicks, J. L., & Delp, S. L. (2023). OpenCap: Human movement dynamics from smartphone videos. PLoS computational biology, 19(10), e1011462. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1011462
  2. Martiš, P., Košutzká, Z., & Kranzl, A. (2024). A Step Forward Understanding Directional Limitations in Markerless Smartphone-Based Gait Analysis: A Pilot Study. Sensors (Basel, Switzerland), 24(10), 3091. https://doi.org/10.3390/s24103091
  3. Voloshina, A. S., & Ferris, D. P. (2015). Biomechanics and energetics of running on uneven terrain. The Journal of experimental biology, 218(Pt 5), 711–719. https://doi.org/10.1242/jeb.106518
  4. Bergmann, G., Bender, A., Graichen, F., Dymke, J., Rohlmann, A., Trepczynski, A., Heller, M. O., & Kutzner, I. (2014). Standardized loads acting in knee implants. PloS one, 9(1), e86035. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0086035

以上

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