Theia3Dのデータを使用したAnyBodyによる筋骨格モデル解析

Theia3Dのデータを使用したAnyBodyによる筋骨格モデル解析

本事例で使用しているTheia3Dで取得したデータを変換し、変換したデータに対応したAnyBodyの解析用モデルを自動生成するTheia2AnyBodyは、AnyBodyの保守契約を継続していただいているユーザー様であれば無償でご利用いただけます。ご利用を希望されるユーザー様は以下のAnyBodyサポートページよりダウンロードをお願いいたします。

  • THEIA2AnyBody : マーカーレスMoCapシステムTheia3Dで取得したC3Dの変換&変換データに対応したAnyScript自動生成

  https://www.terrabyte.co.jp/AnyBody_S/?page_id=4761


概要

近年、従来から用いられている光学式モーションキャプチャ、慣性式モーションキャプチャに次ぐ選択肢として、マーカーレス・モーションキャプチャが普及してきています。マーカーレス・モーションキャプチャには様々な選択肢が存在しますが、商用のマーカーレス・モーションキャプチャ・システムとして広く利用されているものとしてTheia3Dがあります。本ページでは、Theia3Dで取得したデータを用いたAnyBodyによる筋骨格モデル解析について紹介します。


Theia3Dとは?

Theia3Dは、カナダに拠点を構えるTheia Markerless, Inc.(https://www.theiamarkerless.ca/)が開発・販売している商用のマーカーレス・モーションキャプチャ・システムです。他のマーカーレス・モーションキャプチャ・システムと同様に人工知能の技術をベースに構築されているため、あくまでも「撮影された動画データに準拠した姿勢推定」ではありますが、計測対象とする動作課題によっては、ゴールドスタンダードの光学式モーションキャプチャと同等の計測精度を示すことが確認されています(Kanko, R. M., et al. 2021)。Theia3Dで動作測定を行う場合には、6台以上の空間キャリブレーションを施行されたRGBカメラで被写体を撮影する必要があること、撮影された被写体の情報から姿勢推定を行う際にはGPUマシンが必要になること、などの利用する上で要求される事項はありますが、3次元的な姿勢推定の精度は良好であり、既に様々な動作課題・対象者の動作分析に使用されています。Theia3Dについての詳細は以下のTheia Markerless, Inc.のホームページをご参照ください。

  • Theia Markerless, Inc.

       https://www.theiamarkerless.ca/


Theia3Dで取得したデータをAnyBodyで使う方法

Theia3Dで取得した身体運動データは、C3D形式で出力することが可能です。AnyBodyは基本的なフォーマットのC3D形式ファイルの読み込みには対応していますが、Theia3Dから出力されるC3D形式ファイルは、身体を構成するセグメントの回転行列とセグメント原点が同次変換行列の形で集約している特殊なフォーマットとなっているため、そのままではAnyBodyの入力データとして使用することができません。そのため、Theia3Dで取得した身体運動データをAnyBodyで利用するためには、何らかの方法でTheia3Dから出力されるC3D形式ファイルから必要な情報を抽出し、AnyBodyで読込可能なデータフォーマットへ変換する必要があります。この問題を解消するために、弊社ではAnyBodyの保守ユーザー様向けに、以下の2つの機能を有するTheia2AnyBodyをご用意しております。

  • Theia3Dから出力されたC3D形式ファイルからAnyBodyの解析に必要なデータを抽出し、AnyBodyで読込可能な新しいC3D形式ファイルとして出力する
  • 変換したC3D形式ファイルに対応したAnyBodyの解析用モデルを自動生成する

Theia2AnyBodyを用いることで、Theia3Dで取得した動作データをシームレスにAnyBodyに受け渡すことが可能となり、AnyBodyによる筋骨格モデル解析に集中することが出来ます。

Theia3DのC3D形式データとTheia2AnyBodyによって変換されたC3D形式データの違い

 

Theia2AnyBodyによるデータ変換・AnyBodyモデル生成の流れ


解析事例

Theia3Dで計測したスロープ歩行動作のデータを対象として、Theia2AnyBodyによるデータ変換・モデル生成を行い、AnyBodyによる筋骨格モデル解析を実施しました。なお、今回の解析で使用したデータには、床反力データが存在しないため、AnyBodyに搭載されている反力推定機能を用いて床反力の推定したうえで、筋骨格モデル解析を実施しています。どのタイミングで地面やスロープと接触したのかを判定するために、事前にメジャーで測定したスロープの寸法情報(設置位置・傾斜角度など)を基にAnyBody上でスロープを構築しています。

Theia3Dで計測されたスロープ歩行動作データを用いたAnyBodyによる筋骨格モデル解析の様子

 

AnyBodyによる筋骨格モデル解析の結果として得られた、下りスロープ歩行時における筋活動量の一部を以下に示します。

筋骨格モデル解析によって推定された筋活動量

 

筋骨格モデル解析によって推定された筋活動量は、先行研究(Alexander, N., et al. 2016)で報告されている表面筋電計で計測された筋活動量と値・パターンが類似しており、ある程度の妥当性を有する解析結果となっていることが考えられます。

さらに、Theia3Dで同定された足部位置と実寸した情報を基にAnyBody上に構築したスロープとの位置関係に矛盾は生じておらず、スロープと足部の接触判定に支障が生じることはありませんでした。測定誤差やドリフトの影響によって動作測定の精度が不良な場合、実寸の外部環境と同定されたヒトの姿勢情報の間に矛盾が生じることがありますが、今回の計測されたデータには、こういった矛盾は確認されませんでした。このことはTheia3Dで同定されたヒトの姿勢情報の推定精度が高いことを示しており、推定精度が高い動作データを用いて行った筋骨格モデル解析の結果も信頼にあたいするものであることを示唆しています。

 Theia3Dで計測されたスロープ歩行動作データを使用した際の接触判定の様子


参考文献

  1. Kanko, R. M., Laende, E. K., Davis, E. M., Selbie, W. S., & Deluzio, K. J. (2021). Concurrent assessment of gait kinematics using marker-based and markerless motion capture. Journal of biomechanics, 127, 110665. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2021.110665
  2. Alexander, N., & Schwameder, H. (2016). Comparison of Estimated and Measured Muscle Activity During Inclined Walking. Journal of applied biomechanics, 32(2), 150–159. https://doi.org/10.1123/jab.2015-0021

以上

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