アクティブ型とパッシブ型のアシストデバイスの違い
作業時の負担を軽減する、装着型のアシストデバイスは、作業者の動きを補助する仕組みによって、パッシブ型とアクティブ型に大別できます。
パッシブ型のアシストデバイスは動力源を持たず、デバイス内のバネやゴムなどの反発力を利用して作業者の動作をサポートする装置になります。
モデル事例:https://www.terrabyte.co.jp/AnyBody/exe-Any/anybody-sample12.htm
アクティブ型のアシストデバイスはモーターや人工筋肉などの動力源を搭載し、作業者の動作を検知して、動力源が働くことで動作を能動的にサポートする装置です。
パッシブ型のデバイスと比較して、発揮している筋肉の活動に合わせたサポートが可能で高い負担軽減の効果が期待できます。
AnyBody Modeling System によるアシストデバイス解析
AnyBody Modeling System(AMS)では、バネの伸長量などから力を算出するパッシブ型アシストデバイスの解析が容易に行えます。
一方で、AMSでは算出された筋活動量を直接、外部デバイスの制御パラメータとして使用する機能が標準では備わっていません。そのため、筋活動をセンサーで検知し、それに応じて動作するアクティブ型アシストデバイスの解析には工夫が必要となります。
本ページでは、AMSにおいて筋活動量を参照してアクティブ型アシストデバイスの挙動に反映する解析モデルを紹介します。これにより、アクティブ型アシストデバイスの設計や最適化に向けた検討を行うことが可能となります。
解析条件
AnyBodyの人体モデルに対して、下記の部位に一定の角速度を設定して動作を設定しました。
①胸腰部(骨盤-胸郭)の伸展
②肩関節の伸展
③股関節の伸展
また、両前腕部分(肘)に持ち上げる対象物の重さに相当する力を付与することで、持ち上げの負荷を再現しました。
④対象物の重量・・・30[kg]
アシストデバイスのモデル化
・5つのパーツから構成され、1つ1Kgで合計5Kgの重量を持つアシストデバイスをモデルに反映しました。
・アシストデバイスにトルクが与えられると人体と接続している各部位(骨盤,左右の肩甲骨,左右の大腿骨)に力が発生し、動きをサポートする仕組みになっています。
・トルクの大きさは、実行している解析ステップの一つ前の解析ステップで計算された筋活動量を参照して大きさが設定されます。
・トルクの付与には閾値の条件を設定し、OnOffをコントロールすることが可能。
動作
・本事例ではアシストデバイスに与えるトルク条件を下記の3つに設定し、解析を実施しました。
トルク無し/トルク有り(OnOff切り替え)/トルク有り(常時有効)
・各解析ステップにおける脊柱起立筋の中から最も高い筋活動量(最大筋活動量)を観測し、活動量に応じたトルクが次のステップの計算時に付与されます。
・OnOff切り替えでは閾値(0.6)を設定し、脊柱起立筋の最大筋活動量が閾値を超えた場合に次のステップでトルクが発生するように設定しました。
脊柱起立筋の最大筋活動量
・最初の1ステップ目は前ステップの筋活動量がないためアシストトルクが作用しません。
また、最初の1~数ステップはアシストトルクが収束するまで、下記の2~3ステップが繰り返される場合があります。
1ステップ:アシストトルクがないため、筋活動量はデバイスがOFFの場合と等しくなる
2ステップ:1ステップを元に計算されたアシストトルクが付与され、強く作用するため、筋活動量は小さくなる
3ステップ:2ステップで下がった筋活動量で計算されたアシストトルクが付与され、筋活動量は大きくなる
・"ONOFF切り替え"では、閾値付近になるとアシストデバイスのON/OFFが繰り返されることによって、筋活動量値が上下に振動します。
ポイント
・参照している筋肉要素の活動量によって強さが変化する要素の実装。
・閾値を設定し、アシストデバイスのOn/Offのコントロール。
⇒これらの要素を用いて、筋活動量によってOn/Offが定まり、発揮するサポート力も変化するアクティブ型のアシストデバイスを作成しました。
課題
・参照する筋活動量が一つ前の値であるため、遅延が生じています。特に急激な変化を伴う動作の場合、アシストが不適切になる可能性があります。
・一つ前のステップがないため、初期ステップではアシストデバイスの力が定まりません。
・解析直後や閾値付近ではアシストデバイスの力が振動します。