ウォーターバッグ運動の負荷解析(水の挙動の流体解析結果を用いて)

ウォーターバッグ運動の負荷解析(水の挙動の流体解析結果を用いて)

 バケツに入った水を運ぶ、ポリタンクに入った石油を運ぶ、給食用の寸胴を運ぶ、液体洗剤容器を注ぐ。液体の入った入れ物を扱うという場合、容器の内容物がランダムに揺れるせいで、同じような重さの固形物よりも、持ち運びにくさや扱いにくさを感じることがあるでしょう。

 一方、そのような液体の動きのランダムさ、不安定さを、あえて生かしたトレーニング器具もあります。水の入った丈夫な袋状の容器(ウォーターバッグと呼ばれます)を保持する運動を行うことで、中の水の不規則な動き、不安定な重心変動によって、単なるバーベルなどの固体に比べ、体幹などの筋肉が総合的に活動する効果を狙ったものです

今回、 円柱状のウォータバッグを模擬し、中に5㎏(5リットル)の水を入れた状態で、胸の前にて左右の回旋運動をした場合を想定し、その身体への影響を解析します。本事例では、その時の複雑な水の動きも考慮して、 AnyBodyの筋骨格解析を行い、体幹や上肢の負荷を調査しました。

なお、比較用に、液体か固体かで人体にかかる負荷がどのように違うかも確認します。そこで5kgの固体(丸太のようなもの)の場合の運動も、参照用として掲載します。

①固体の場合

円柱状の固体物、例えば、丸太のようなものを想定します。AnyBodyでは、質量と慣性モーメントを重心位置に付加します。

②ウォーターバックの場合

抱えて揺すった場合の動作を想定して、あらかじめウォーターバック単体で流体解析を行い、水の挙動を調べました。この解析は弊社テラバイトの流体解析(OpenFOAM解析事例)に掲載してあります。

リンク→「密閉容器内の液体挙動」

解析による流体の重心位置の挙動を、AnyBodyでの入力条件としました。AnyBody上では、手の動きとは別の質量を付加し、それに重心位置座標の時刻歴を与えました。

<解析結果>

人の動きは実測データではなく、ある程度妥当な回旋動作となるように、AnyBodyのドライバ(動作生成機能)を使ってねじり状態の動きをサインカーブで生成しています。

丸太(固体)の場合(上)と、ウォーターバッグ(液体)の場合(下)で、人体動作は同じものを与えます。実際は、受ける反動の違いから、人の動きも変わってくるはずですが、ここではどちらでもしっかりと同じ動きを行う、という仮定のもとのでの解析と考えます。

 

この時の、体幹周辺の筋の活動結果を下に示します。

固体の場合に比べ、液体の場合は、負荷の変動がランダムに変動していることがわかります。また、固体の時は動作が静止するような状態の場合であっても、中の水は止まることなく慣性力の変動が発生しています。その力に抵抗するため、身体負荷が大きく上昇・変動していることがわかります【赤線部分】。このように同じ重量、同様な運きであっても、扱うものが流体か、固体かで、身体への負荷が変わることがわかります。

 

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