概要
アシストスーツ(“マッスルスーツ”【イノフィス社製】)を被験者に装着させ、保存水ケース移動とショベル除雪のような腰負担がかかる作業の動作を、モーションキャプチャシステムによる計測で取得しました。
AnyBody Modeling Systemの筋骨格解析とモデル化機能を用い、アシストスーツの人体への影響を評価するモデルを作成しました。そのモデルは、スーツ質量・太ももに作用する力・人体動作などの様なデータを考慮します。
本事例では、モデル化条件と、AnyBodyで得られた結果を紹介します。
被験者データ
被験者1人の動作を取得
被験者データ:男性・34歳・170cm・68kg
保存水のケース(動作①)
動作定義: 体幹を屈曲し、床に置いてある12kgの保存水ケースを右側から左側へ運び、床に置く動作を被験者に行ってもらいます。
ショベル除雪のケース(動作②)
動作定義: 立位姿勢からしゃがみ、繰り返し3回、ショベルで床レベルにある雪を除雪する動作を被験者におこなってもらいます。
主なデータ: ショベルの質量=1kg
雪の質量=2kg
アシストスーツのモデル化
被験者の動作取得に加え、スーツにマーカを貼ってその動作を取得しました。 AnyBodyモデルでは、スーツを以下の5セグメントで分けました。(図 4. 参照)
【Body】①
【Rotator】(右②/左③)
【Suit leg】(右④/左⑤)
スーツの質量は、5.1kgとして、全てのセグメントへ任意に配布しました。 BodyとRotatorは、回転ジョイントで結合し、そのジョイントの回転角度によって、0度(立位姿勢) ⇒ 0ニュートン、 90度以降(しゃがんだ姿勢) ⇒ 250ニュートンの力を各太ももに作用するようにしました。
アシストスーツのストラップに同様の力が作用するようにし、釣り合いになる力を骨盤に作用させました。(図 5. 参照)
解析結果まとめ
両動作とも、アシストスーツ無と有の状態で被験者の動作を取得し、それぞれのAnyBodyモデル作成と解析をおこないました。各動作における2つの解析結果を比較すると、アシストスーツの人体への影響の評価が可能になると考えられます。
AnyBody結果では、筋肉の活動量と腰椎関節における圧縮力の値が、手を伸ばして体幹屈曲する時に、急に上がることを確認することができました。またアシストスーツを利用すると、その上昇が小さくなることが見えました。立位姿勢では、スーツ有と無でも、腰椎関節における反力値は差を特に示しません。
以下の2つアニメーションでは、両動作のAnyBody結果をまとめます。 AnyBodyが計算した筋肉の活動量を可視化する方法として、青は活動の無い状態を示し、青⇒赤⇒ピンク(オーバーロード)と変化するにしたがい、筋活動が高くなることを示しています。
保存水ケース移動の動作
腰椎関節の反力は、スーツ無は4500N、スーツ有は3200Nを示し、71%までに減少します。
(アニメーション 1. 参照)
ショベル除雪動作
腰椎関節の反力は、スーツ無は3600N、スーツ有は2000Nを示し、56%までに減少します。
(アニメーション 2. 参照)
両動作と定義した解析条件で、アシストスーツでは腰椎関節を渡る筋肉の活動量を下げる影響が明確に見え、従って腰にかかる負担を減らす影響があるように確認することができました。
それに加え、アニメーションで表示されるチャートの赤い線では、米国国立労働安全機構(NIOSH)が3400Nという安全限度にした値を示します。AnyBodyの結果では、アシストスーツを利用すると、その限度以下で作業できるようになることを示します。