適用例
昨今、マーカレスによるモーションキャプチャ(動作取得)ニーズが高まっています。
①測定ラボスペースの確保、高額な測定機器、機器キャリブレーションの煩雑さ、測定時のマーカ/センサのずれ、欠落、などから開放されたい・・・
②マーカや、デバイスに邪魔されない、自然な人間動作を取りたい・・・
というのが大きな理由といえます。
マーカレスでの動作取得可能性として、深度センサ、レーザデバイス、イメージデータの利用、などがありますが、とくに最近では、機械学習・深層学習ブームに相まって、人工知能(AI)によって画像イメージのみから人体特徴点(関節中心)の位置が抽出され、かなり正確に人体の姿勢推定がされるようになって来ました。姿勢推定のフリーソフトとしては、たとえばカーネギーメロン大学発の『OpenPose』などが有名です。
本解析例では、一般的なデジタルカメラで撮影した動画のみ用いた、AIによる3次元の姿勢推定データを使って、Anybodyで筋骨格解析を行った例をご紹介します。
AnyBody側からしますと、そのモーキャップの出所はどこであれ、一意に人体動作が3次元的に定まるデータがありさえすれば、筋骨格解析が可能です。その意味では、実測か、AIを介したデータか、ということは入力上大きな問題ではありません。しかし、被験者様の画像(映像データ)のみから、より正確に姿勢推定される技術が今後ますます発展してくれば、 遠隔地の方、自宅からなかなか出歩けない方などにとっては、測定場所やカメラ、デバイスといった制約のために、現状ではモーション準備の時点で、すでにハードルが高い現在の筋骨格解析が、より身近なものになるかもしれません。
VisionPoseによる姿勢推定結果の利用
本事例紹介では”VisionPose” 【NEXT-SYSTEM社製】による姿勢推定結果を用いた筋骨格解析結果を紹介します。当社テラバイトラボにて、重量物の持ち上げ動作をおこないました。デジタルカメラで動画撮影すると同時に、 比較用検証のため、弊社Viconシステムにてマーカデータも取得しました。VisionPoseでは、動画のみから、身体特徴点(関節位置)が特定されます。 NEXT-SYSTEM社様ご協力のもと、関節位置(特徴点)を推定いただきました。
解析手順
VisionPoseから出力された 1.特徴点(各関節)座標データを用いて、2.AnyBody上でスティックフィギュアを動作させました。そののち、3.ANyBodyが有する人体骨格に動作フィットさせます。この段階で関節角度の時刻歴情報による動作が確定します。 いくつかの必要な補正事項がありましたが、これらは手動での補正となりました。
解析結果
逆動力学解析による筋力/筋活動推定結果(アニメ)、および腰椎間関節力の出力(グラフ)を比較します。
モーション規定用に、左はVisionPose推定の関節座標使用したもの、右は同時取得しておいた光学式モーションキャプチャによるマーカ位置使用したものです。
運搬(回転)途中などは、残念ながら不自然な動作規定となっていますが、腰椎間に発生する関節圧縮力はほぼ、同様な結果を示しました。限定的な特定部位観察であれば、妥当な筋活動、関節反力が得られる可能性があります。