筐体のシールド効果

筐体のシールド効果

概要

筐体のシールド効果を解析した事例を紹介します。筐体は、機器や部品を収納して保護する外装のことで、EMC(ElectroMagnetic Compatibility)の観点では、機器や部品から放射される電磁ノイズや外部から進入する電磁ノイズを遮蔽(シールド)する役割を担っています。ここでは、基本的な形状である球形筐体と箱形筐体について解析した結果を説明します。

球形筐体のモデル

初めに、図1に示すような球形筐体に電磁波が入射する事例について説明します。この場合、シールド効果は入射電磁波の振幅Eincと筐体中心での電磁波の振幅Ectrにより式(1)で定義されます。球形筐体は、厚さ3 mm、導電率100.0 S/m、比誘電率1.0、比透磁率1.0の導電性材料とし、開口は無く完全に遮蔽されているものとします。したがって、電磁波はこの導電性材料を透過して球形筐体の内部に入り込みます。半径が 5、10、15、20 cmの4種類のケースについてシールド効果を解析します。なお、この球形筐体は文献[1]のモデルを参考にしています。

[1] 長谷部、小林、“球形チャンバーを用いた導電性材料のシールド効果測定法について”、電子情報通信学会論文誌 B、Vol. J70-B、No.7、pp.862-873、1987。

解析結果

Fekoで解析した結果を図2(a)に、文献[1]に掲載されたベクトル球波動関数を用いた理論解析の結果を図2(b)にそれぞれ示します。(a)と(b)の結果は良好に一致していて、Fekoの解析結果が妥当であることが確認できます。

箱形筐体のモデル

次に、図3に示すようなスリットのある箱形筐体に電磁波が入射する事例を説明します。この場合、シールド効果は球形筐体の場合と同様に、入射電磁波の振幅Eincと筐体中心での電磁波の振幅Ectrにより式(2)で定義されます。ここで、電磁波の電界の向きは垂直とします。箱形筐体は、厚さ約1 mmの金属を想定して完全導体とし、大きさは幅と奥行きが300 mm、高さが120 mmとします。スリットが135×12 mm2 (スリット大)と90×10 mm2 (スリット小)の2種類のケースについて解析します。なお、この箱形筐体は文献[2]のモデルを参考にしています。

[2] Marvin, A.C et al. "A proposed new definition and measurement of the shielding effect of equipment enclosures.", IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility. pp. 459-468, Volume: 46, 2004

解析結果

図4にスリット大の箱形筐体のシールド効果を、図5にスリット小の箱形筐体のシールド効果を、それぞれ示します。図において、(a)はFekoで解析した結果、(b)は文献[2]に掲載されたTLM(Transmission Line Matrix)法による計算結果です。(a)と(b)の結果は良好に一致していて、Fekoの解析結果が妥当であることが確認できます。

まとめ

Fekoを用いて球形筐体と箱形筐体のシールド効果を解析し、文献に掲載された理論値や計算値と比較しました。両者の結果は良好に一致し、Fekoの解析結果が妥当であることを確認できました。
ここで示した事例は検証のため基本的な形状のモデルですが、Fekoを使用することで実際の製品形状に近いもっと複雑なモデルでも解析可能と考えられます。

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