概要
プリント回路基板の配線を電気信号が伝搬するとき、グランドの状態によって問題が発生することがあります。ここでは、グランドが分割されたマイクロストリップ線路を解析し、どのように特性が変化するかを確認します。
リファレンスモデル
図1に、リファレンスモデルとしてのマイクロストリップ線路を示します。
図1 マイクロストリップ線路
図2-1に、マイクロストリップ線路のSパラメータを示します。100~500MHzの周波数帯域で、S11≦-16dB、S21≅0dBとなっていて良好な透過特性が確認できます。
図2-2に、信号源に振幅1Vの台形波を入力した場合の電圧時間波形を示します。Fekoの時間領域解析機能を使用しています。Port1は信号源で、Port2は終端で、それぞれ観測された時間波形です。波形が劣化することなくマイクロストリップ線路を伝搬することが確認できます。
図2-1 Sパラメータ
図2-2 時間波形
図3に、基板内部のグランド面上の磁界強度を示します。これは、周波数100MHzでの位相の変化に対する磁界の瞬時値の変化です。磁界のエネルギーがマイクロストリップ線路の近傍に集中していることが確認できます。
図3 磁界強度(100MHz)
グランドが分割されたモデル
図4に、グランドが分割されたマイクロストリップ線路を示します。
図4 グランドが分割されたマイクロストリップ線路
図4-1に、放射電力を示します。リファレンスモデルに比べて、グランドが分割されたモデルでは放射電力が非常に大きいことが確認できます。
図4-1 放射電力
図4-2に、Sパラメータ(S21)を示します。リファレンスモデルに比べて、グランドが分割されたモデルではレベルが低下していることが確認できます。特に低周波帯での低下が顕著です。
図4-2 Sパラメータ
図4-3に、信号源に振幅1Vの台形波を入力した場合の電圧時間波形を示します。Port1は信号源で、Port2は終端で、それぞれ観測された時間波形です。波形の劣化が顕著で、マイクロストリップ線路をほとんど伝搬せずに反射していることが確認できます。
図4-3 時間波形
図4-4に、基板内部のグランド面上の磁界強度を示します。これは、周波数100MHzでの位相の変化に対する磁界の瞬時値の変化です。磁界のエネルギーが分割されたグランド間のギャプに沿って漏洩し、基板の端まで到達していることが確認できます。
図4-4 磁界強度(100MHz)
グランドが追加されたモデル
図5に、グランドが追加されたマイクロストリップ線路を示します。これは、図4に示したグランドが分割されたマイクロストリップ線路の基板の下に、基板裏面と同じ大きさのグランドを追加したモデルです。分割されたグランドと追加されたグランドは、8個の接続素子(10Ωの抵抗)で接続されています。
図5 グランドが追加されたマイクロストリップ線路
図5-1に、放射電力を示します。グランドが分割されたモデルに比べて、グランドが追加されたモデル(図中のTwo grounds)では放射電力が低減されていることが確認できます。
図5-1 放射電力
図5-2に、Sパラメータ(S21)を示します。グランドが分割されたモデルに比べて、グランドが追加されたモデルでは低周波帯(200MHz以下)と高周波帯(450MHz以上)でレベルが改善されていることが確認できます。しかしながら、中周波帯(250~450MHz)ではレベルが低下しています。
図5-2 Sパラメータ
図5-3に、信号源に振幅1Vの台形波を入力した場合の電圧時間波形を示します。Port1は信号源で、Port2は終端で、それぞれ観測された時間波形です。図4-3の波形に比べて改善されていますが、レファレンスに比べて振幅は若干低下しています。
図5-3 時間波形