筐体にグランドが接続されたマイクロストリップ線路

筐体にグランドが接続されたマイクロストリップ線路

概要

 電子機器において、金属筐体の内部にプリント回路基板や電子部品が収納されることがしばしばあります。その際、金属筐体は基板や部品と電気的に接続されてグランドとして扱われることがあります。ここでは、マイクロストリップ線路のグランドと金属筐体の接続状況が特性にどのように影響するかを確認します。


解析モデル

 図1-1に解析モデルの概観図を、図1-2に解析モデルの側面接続図を、それぞれ示します。筐体と蓋は金属です。図中の「MSL」はマイクロストリップ線路のことです。また、「グランドが分割された基板」は、解析事例「グランドが分割されたマイクロストリップ線路」の「グランドが追加されたモデル」に示されているものと同じ構造です(蓋が追加グランドに相当します)。
 基板のグランドは2つに分割されていて8個の接続素子(10Ωの抵抗)によって蓋と接続されています。また、筐体と蓋は4個の接続素子によって接続されています。

図1-1 解析モデル(概観図)

図1-2 解析モデル(側面接続図)

 図2に示すように、筐体と蓋の接続素子をパラメータとして、接続素子がない場合も含めて3通りのケースを解析しました。

図2 筐体と蓋の接続


解析結果

 以下に、3通りのケースの解析結果を示します

 図2-1に、放射電力を示します。筐体と蓋の接続素子がない場合は、非常に高いレベルの放射電力が確認できます。接続素子の抵抗値が300Ωの場合は、周波数300MHzf付近で若干レベルが低下しますが全体的には変化ありません。一方、接続素子の抵抗値が10Ωの場合は、大幅にレベルが低下し改善が見られます。これは、解析事例「グランドが分割されたマイクロストリップ線路」のリファレンスモデルに近いレベルとなっています。

図2-1 放射電力

 図2-2に、Sパラメータ(S21)を示します。接続素子がないケースと接続素子の抵抗値が300Ωのケースでは、周波数350~400MHz付近で凹凸が確認できます。接続素子の抵抗値が10Ωの場合は、凹凸はありませんがレベルの低下が見られます。

図2-2 Sパラメータ

 図2-3に、信号源に振幅1Vの台形波を入力した場合の電圧時間波形を示します。Fekoの時間領域解析機能を使用しています。Port1は信号源で、Port2は終端で、それぞれ観測された時間波形です。台形波はマイクロストリップ線路を伝搬していますが、Port2では振幅が若干低下していることが確認できます。また、Port1では反射波が確認できます。

図2-3 時間波形

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