金属薄膜とコンクリート壁のシールド効果

金属薄膜とコンクリート壁のシールド効果

概要

金属薄膜とコンクリート壁のシールド効果を解析した事例を紹介します。EMC(ElectroMagnetic Compatibility)の観点では、膜や壁が電磁ノイズを遮蔽する効果(シールド効果)を定量的に評価することは最も基本的な取り組みです。

 

解析モデル

ここでは、図1に示すようにシールド材に電磁波が垂直に入射する現象を想定します。シールド材の材質は均一、電磁波は平面波とします。この場合、シールド効果は入射電磁波の振幅Eincと透過電磁波の振幅Etraにより式(1)で定義されます。

以下に、シールド材の材質と厚さが異なる4つのモデルについてFekoで解析した結果を示します。なお、このようなモデルのシールド効果はシェルクノフの理論[1]を用いて厳密に導出できることが知られていますので、その結果と合わせて示します。

[1] S.A. Schelkunoff, "Electromagnetic Waves" , Van Nostrand, 1943, Section 8.18.

 

解析結果

図2に金属薄膜のシールド効果を示します。図2(a)は厚さ4μm、導電率5.8×107(S/m)、比透磁率1.0の銅の薄膜、図2(b)は厚さ2μm、導電率0.986×107(S/m)、比透磁率140.0の鉄の薄膜のシールド効果です。ここで、Fekoの解析結果はSimulated、シェルクノフの理論からの導出結果はTheoreticalとしています。両者の結果が非常に良く一致していることが確認できます。これらの金属薄膜は、とても薄いにもかかわらず非常に高いシールド効果を持っていますが、それは導電率がとても大きいからです。

図3にコンクリート壁のシールド効果を示します。図3(a)は厚さ10cm、図3(b)は厚さ20cmのコンクリート壁です。コンクリートの電気的特性は、導電率0.0278(S/m)、比誘電率6.0、比透磁率1.0としています。ここでも、Fekoの解析結果とシェルクノフの理論からの導出結果は非常に良く一致していることが確認できます。これらのコンクリート壁は、比較的厚いにもかかわらずシールド効果はあまり高くありませんが、それは導電率が小さいからです。また、周期的な変化をしているのは、コンクリート壁と空気との境界で発生する多重反射の影響です。

まとめ

Fekoを用いて金属薄膜とコンクリート壁のシールド効果を解析し、シェルクノフの理論からの導出結果と比較しました。両者の結果は非常に良く一致し、Fekoの解析結果が妥当であることを確認できました。
ここで示した事例は平面波に対する均一なシールド材の解析ですが、Fekoを使用することで近傍電磁界に対する解析や多層構造のシールド材の解析も実行可能と考えられます。

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