1. 概要
ローカル5G評価のためのワークフローを紹介します。図1-1に評価対象とした神戸市JR三ノ宮駅周辺の市街地を、図1-2にその解析モデルの概観図を、それぞれ示します。このモデルについて、都市シナリオを用いた電波伝搬解析を実施してカバレッジ(受信電力)を評価しました。
※地理情報システムQGISを使用して建物データと地形データを作成する手順をまとめた資料をユーザーの方に提供しております。詳細は弊社担当営業またはサポートセンターまでお問い合わせください。
図1-1 評価対象
図1-2 解析モデルの概観図
2. ワークフロー
図2に本解析のワークフローを示します。手順は以下のようになります。
初めに建物データと地形データを準備します(準備方法については次節をご参照ください)。それらをWallMan[1]で読み込み必要に応じて編集してから、それぞれ建物データベースと地形データベースに変換し出力します。
次にアンテナの水平面内と垂直面内の2次元の放射パターンを準備します。AMan[2]を用いて、それらの画像イメージをトレースして数値データ化し、さらに補間処理をして3次元の放射パターンに変換して出力します。
最後に建物データベース、地形データベース、3次元のアンテナ放射パターンをProMan[3]で読み込み、アンテナサイト、伝搬モデル、出力情報などの必要な解析条件を設定して電波伝搬解析を実行します。
[1] WallMan : 屋内/都市のシナリオにおいてデータベースを作成/編集するためのツールです。
[2] AMan : アンテナ放射パターンを設定するためのツールです。
[3] ProMan : 電波伝搬解析とネットワークシミュレーションを実行するシミュレータです。
これらは全てWinPropの機能です。
図2 ワークフロー
3. 地形データと建物データの準備
都市シナリオの解析では、基本的に地形データと建物データが必要です。ここでは、G空間情報センター[4]のDEMデータ(数値標高モデル)とDSMデータ(数値表層モデル)および基盤地図情報サービス[5]の基盤地図情報データを元にして地形データと建物データを準備する方法について説明します。
図3にDEMデータとDSMデータのイメージを示します。この図からわかるように、DEMデータから地形データが、DEMデータとDSMデータの差分から植生や建物の高さが、それぞれ取得できることがわかります。そこで、以下の手順で地形データと建物データを準備します。
(1) G空間情報センターの下記データをダウンロード
DEMデータ(数値標高モデル)、DSMデータ(数値表層モデル)
(2) 盤地図情報サービスの下記データをダウンロード
基盤地図情報データ
(3) 地理情報システムQGISを利用して以下を実行
① DEMデータを地形データとしてGeoTIFFファイル形式で出力
② [DSM–DEM]を計算して"建物の高さ"を算出
③ 基盤地図情報データの建物のポリゴンに"建物の高さ"を割り当て
④ 上記を建物データとしてシェープファイル形式で出力
図3 DEMデータとDSMデータ
[4] G空間情報センターのWebサイト https://www.geospatial.jp (2024年3月現在)
兵庫県_全域DSM https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/2010-2018-hyogo-geo-dsm
兵庫県_全域DEM https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/2010-2018-hyogo-geo-dem
[5] 基盤地図情報サービスのWebサイト https://fgd.gsi.go.jp/download/menu.php (2024年3月現在)
4. 解析モデル
図4に解析モデルの平面図を示します。グレーで表示されているのは市街地のビルです。Siteと表示されているのは送信局で、AManが出力したアンテナパターンを持つ指向性アンテナが3個設定されています。表4に解析モデルの概要を示します。伝搬モデルはローカル5Gの免許申請で指定されているITU R P.1411を使用します。
図4 解析モデルの平面図
表4 解析モデルの概要
5. 解析結果
図5-1~5-4に解析結果を示します。図5-1と図5-3はSite1による受信電力、図5-2と図5-4はSite1とSite2による受信電力(最大値の和)です。
図5-1 Site1のカバレッジ
図5-2 Site1とSite2のカバレッジ
例えば、-80 dBmを超える領域をカバーエリア、-80 ~-90 dBmの領域を調整対象区域、のように表示すると図5-3、図5-4のようになります。
図5-3 Site1のカバレッジ
図5-4 Site1とSite2のカバレッジ