1. 概要
屋内シナリオを解析した事例を紹介します。図1に解析モデルの概観図と平面図を示します。建物は木材、レンガ、コンクリート、ガラスで構成しています。3個の送信機を平面図のSite1~3の場所に配置します。
概観図
平面図
図1 解析モデル
表1に解析モデルの概要を示します。初めにStandard Ray Tracingを用いた電波伝搬解析を実行します。次に通信規格をIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)としてネットワークシミュレーションを実行します。Site1とSite2の搬送波の周波数が同じであることを留意してください。
表1 解析モデルの概要
2. 電波伝搬解析の結果
図2-1に各Siteによる受信電力を示します。全SiteはSite1~3の受信電力の最大値の合計です。
図2-1 受信電力
図2-2にLOS/NLOS/OLOSを示します。LOSは送信機から直接見通せる領域です。NLOSは障害物の陰になっているために送信機から直接見通せない領域です。OLOSは送信機から直接見通せないけれども送信機と障害物との交差なしで接続できる領域です。
図2-2 LOS/NLOS/OLOS
3. ネットワークシミュレーションの結果
図3-1にサイトエリア、ベストサーバー、インターフェランスを示します。サイトエリアはその位置で最もよく受信できるサイトを示します。ベストサーバーはその位置で最もよく受信できるキャリア(搬送波)を示します。インターフェランスはその位置での干渉の度合を示します。Site1とSite2では同じ周波数のキャリア(搬送波)を設定しているので、それらのサイトエリアが同一のベストサーバーで表示され、そこでの干渉は大きくなります。
図3-1 サイトエリアなど
図3-2に伝送モードごとのダウンリンクの信号対雑音干渉比(SNIR)を示します。SNIRは送信機の最大可能電力とシステムの可能な最大の干渉および雑音電力を考慮に入れて計算されます。電力制御アルゴリズムは考慮されません。
図3-2 信号対雑音干渉比 (SNIR)
図3-3に伝送モードごとのダウンリンクのデータレートを示します。データレートはSNIRの状況と個々の伝送モードについて定義されたSNIR目標値に基づいて計算されます。
図3-3 データレート