3次元形状のトポロジー最適化の事例を紹介します。
本事例では、JMAGの3次元静磁界解析にトポロジー最適化を適用して、コイルに定電流が流れる時、指定領域の磁束密度が小さくなるような磁気シールドの形状を探索しました。図1は磁気シールドの初期形状です。境界条件を利用し、1/8でモデル化しています。最適化の設定にて、目的関数「評価領域の磁束密度の平均値Baveの最小化」、「磁気シールドの体積Vの最小化」を定義します。設計領域と定義し、そこに材料を2つ割り当てます(今回は空気と磁気シールド)。設計領域内の各要素にて材料を切り替えて、目的関数に対する最適な材料分布を探索します。最適化エンジンは、多目的遺伝的アルゴリズムです。
● トポロジー最適化の計算結果
各世代最優良ケースの解分布
多目的遺伝的アルゴリズムにおける各世代の最優良ケースを集めた解分布を図2に示します。
形状の特徴で解分布をGroup1~Group3に分けました。Group2とGroup3の間ではBave のオーダーは同程度で、V を増やしてもBaveはあまり変化がないことが分かります。Group1とGroup2の間ではBaveに大きな違いがみられます。これは、V を減らしたことで、必要な位置に磁気シールドが配置されていないことを示しています。
磁束密度ベクトル図(Group1、2比較)
図3にGroup1、2の代表ケースの磁束密度ベクトル図、磁束線図を示します。
Group1では、評価領域付近が磁路となっているため、角部で磁束が侵入しています。Group2では、評価領域より離れた1層目の磁気シールドが主な磁路となり、さらに評価領域付近に2層目の磁気シールドで1層目にて漏れた磁束をカバーしています。
磁束密度ベクトル図(Group2、3比較)
図4にGroup2、3の代表ケースの磁束密度ベクトル図、磁束線図を示します。
Group3は磁気シールドがひとつながりのため、評価領域の方へ磁束が広がっています。Group2では空気領域により磁路を制限し、評価領域側に磁束が広がることを防いでいます。また、Group2では空気領域を増やしているため、磁気シールドの体積を節約する事にもつながります。
まとめ
トポロジー最適化は形状変更の自由度が高く、計算結果から磁気シールド部材、空気に関する効率の良い配置のヒントや新たな発想を得ることができます。また、3次元解析を用いてトポロジー最適化を行うことで、2次元解析を用いた場合よりもさらに多くの情報を得ることができます。