3次元形状のトポロジー最適化を「密度法」 を用いて計算した事例を紹介します。
図1は磁気シールドの初期モデルです。詳しい計算条件は<ON/OFF法を用いた3次元形状のトポロジー最適化事例>をご参照ください。最適化の設定にて、目的関数「評価領域の磁束密度Bの最小化」を定義します。設計領域内の要素の材料密度を変化させ、最適な材料密度分布を探索します。
● トポロジー最適化の計算結果
最適ケースの材料密度コンター図
最適化計算が収束した最適ケースの材料密度分布を図2に示します。
材料密度がゼロの部分は比透磁率が1となり空気となります。磁気シールド(材料密度が高い箇所)は、Y方向とZ方向に関しては、評価領域付近に2層、離れた箇所に1層の3層構造になっていることが分かります。X軸方向に関しては、評価領域付近に1層のみとなっています。
最適ケースの磁束線図
磁束線図を図3に示します。
磁束がひとつの束のように纏まり逃げています。また評価領域付近の磁気シールドの層により、漏れた磁束が評価領域に入り込まないようにカバーしています。磁束線図の傾向は、ON/OFF法を用いて計算した場合( <ON/OFF法を用いた3次元形状のトポロジー最適化事例>)と似ています。
検討モデル生成
材料密度0.75以上の要素を抜き出したモデルを図4に示します。
各要素の材料密度の情報をJMAGで出力し、自作プログラムを用いて要素密度0.75以下の要素を消去したモデルを新たに生成しました。モデル形状のアイデアやヒントを得るためのさらなる材料として利用可能です。
まとめ
本事例と<ON/OFF法を用いた3次元形状のトポロジー最適化事例> の比較を表1に示します。
本事例では、両手法とも同じ傾向の結果が得られました。各手法を比較すると、「密度法」は計算結果を得るために必要なケース数が少なく比較的早く計算が終わりますが、感度解析ですので、局所解に陥る可能性があります。ON/OFF法では遺伝的アルゴリズムを使用しているため必要なケース数は多いですが、局所解に陥りづらく、多目的最適化や非線形で多峰性を有する問題に有効です。本事例のように1ケースあたりの計算時間が長くなるモデル(3次元モデル等)の単目的最適化では、求解までの計算ケース数が少ない「密度法」を用いることは有効と考えられます。トポロジー最適化を実践する場合は、「密度法」「ON/OFF法」それぞれ表1に示すような得意、不得意があるため、計算モデルや場面により各手法を使い分けると良いでしょう。