消波ブロックによる波の減衰効果の比較解析

消波ブロックによる波の減衰効果の比較解析

消波ブロックによる波の減衰効果の比較解析

1. モデル説明

消波ブロック(もしくは砕波ブロック)の設置は、海岸浸食や海岸災害から港湾施設を守る有効な方法の一つです。消波ブロックは、砕波によって波の持つ運動エネルギーを分散させるだけでなく、その構造による反射や屈折、摩擦等、複合的な効果でエネルギーを減衰させます。消波ブロックは、不動テトラ社のテトラポット以外にも、様々な形状が提案されています。また、形状だけでなく、二層被覆方式、水平積形式、乱積形式等、配置や設置方法によっても減衰効果は大きく影響を受けます。

このため、設置予定地域の海岸・海底地形や常時到達している波の特性に応じて、消波ブロックの適切な形状・配置方法を検討する必要があります。流体解析を活用すると、水槽実験に比べ、消波ブロックの形状や配置方法の効果検証コストを、大幅に削減することができます。

本解析事例では、汀線に沿って消波ブロックを2列並べて配置し、消波ブロックの有無による海岸に駆け上がる孤立波の変化を、OpenFOAMのVOF法ソルバーであるinterFoamを用いて比較しました。図1にモデル概要図を示します。

2. 解析結果

図3-1に消波ブロックを設置した場合の波のアニメーションを、図3-2に消波ブロックが無い場合のアニメーションを示します。消波工によって波が減衰している様子を確認することができます。

 

図3-1. 消波ブロックあり

図3-2. 消波ブロックなし

 

 

3. まとめ

・ 消波ブロックの形状や設置パターン、間隔等を変更し、減衰効果の予測や適切な配置を検討する事ができます。
・ 消波ブロックだけでなく、人工リーフ等、様々な形状の海岸構造物における減衰・消波効果を検証する事ができます。
・ OpenFOAMはライセンスフリーの熱流体解析ソフトのため、大規模なモデルでもライセンスコストを気にすることなく計算することができます。このため、地形データを読み込むことで、実際の地形を想定した消波ブロックの効果を予測・検討することも可能です。

 

 

4. 補足(paraviewによる可視化)

OpenFOAMの計算結果は、ライセンスフリーの可視化ソフトparaviewで描画することができます。

計算フォルダに、中身が空で拡張子が.foamファイルを準備しておき、Fileメニュー > Openから、.foamファイルを開くと、結果データを読み込むことができます。
interFoamソルバーをはじめとする多相流の計算では、流体率で閾値を指定したフィルターを追加すると、第1流体(もしくは第2流体)のみ抜き出して描画することができます。

参考として、第1流体を抜き出して描画する手順を示します。
1. Fileメニュー > Openから、.foamファイルを開く
2. Pipeline browserで.foamファイルが選択されている事を確認し、Filtersメニュー > Alphabetical > IsoVolumeを選択
3. Input Scalarsを alpha.waterに指定
4. Minimumに0.5、Maxmumに1.1を入力してApplyボタンをクリック


以上の操作で、第1流体のみ抜き出して描画することができます。Coloringで、UやPressureを指定すると、抜き出した第1流体の表面に流速や圧力で着色されます。
また、Minimumに-0.1、Maxmumに0.5と入力すると、第2流体のみ抜き出して描画することができます。

 

 

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