検証概要
建物群を風が吹き抜けるシミュレーションを、非圧縮性流体定常解析ソルバーsimpleFoamを用いて行いました.風の流速分布を求め、歩行者のいる地面付近の流速を調査しました.
今回は高層ビルの有無によってビル近辺の流速分布が変わる様子を調べました.
モデル・計算条件
- 建物の数:227
- 最高高さ:200 m
- 最低高さ:5.192 m
- 平均高さ:28.02 m
- 流入条件:1/7乗速
- 平均流入速度:10 m/s
図1の通り,矩形の解析空間に建物を配置し,風を流入させています.風の向きはx軸正の方向になっています.
図2で示した建物群の中心に,モデル中で最も高い高層ビル(青い建物)を配置しました.①ビルありと②ビルなしの2ケースのモデルについて,定常解析を行いました.
図1:解析空間のサイズ
図2:建物群の拡大図
解析結果
流速ベクトル
図3の丸で囲んだ位置の,鉛直上方から見た流速ベクトルを図4-1(①ビルあり),図4-2(②ビルなし)に示します.図には地面からの高さが1メートルの地点の流速のカラーマップと,水平方向の流速のベクトルを青矢印で合わせて表示しています.位置比較の参考のため,高層ビルの位置を赤丸で示しました.
図4-1と図4-2を比較すると,ビルありの方はビルなしの方と違い,高層ビルの根本から、x軸正の方向(図の右方)とy軸正の方向(図の上方)に流速の速い領域が長く広がっています.
図3:流速ベクトルの可視化位置
図4-1:①ビルあり
図4-2:②ビルなし
流線と粒子追跡
図4と図5の流速ベクトル分布の違いを調べるため,ビルありのケースにて高層ビル周りの流れの様子を調べました.以下の動画は流線と粒子追跡の様子の可視化です.
動画:ビルありのケースの流線と粒子追跡(一部建物を透過)
図5では流線と同時に,地表から高さ1メートルの地点の流速ベクトルを表示しています.
動画と図5より、流入口から吹いてきた風が高層ビルに当たり地面へと吹き下ろしていることがわかります.この風が地面にぶつかって方向を変え,図4-1の右方と上方へ強く吹く風となっています.
図5:高層ビル付近の流線(一部建物を透過)
まとめ
今回の結果により,高層ビルの有無で地上付近の流速分布が大きく変わりうることが示されました.高層ビルを立てた場合,ビルありのケースのように流速の速い箇所にいる歩行者に強風が来ることが予期されます.
このように,シミュレーションでは大型の建物を建てたときに周囲で強風が発生するかどうかを予測することができます.風洞実験を行わなくても予測可能なので,コストの削減を図ることができます.