解析概要
ヒーター(ラジエター)の熱により自然対流(乱流)が発生する室内空間の解析を行いました。室内では高温のヒーターからは熱ふく射が発生します。本解析では熱ふく射モデルとして離散方位法モデル(fvDOMモデル)を採用しました。乱流モデルにはk-Omega SSTモデルを用い,複数の流体領域と固体領域を解析できるchtMultiRegionFoamソルバーを用いて解析を行いました。
解析モデル
解析モデルを図1に示します。解析空間の大きさは6畳の室内で,室内にはヒーター(ラジエター)と机が設置されています。ヒーター温度は70℃,外気温度は0℃,隣室温度は10℃です。
外気と室内の間にある外壁,机,およびヒーターは固体としてモデル化され,固体内部で温度が求められます。また,窓とドアは固体としてモデル化する代わりに,境界条件としてそれぞれ外気温度と隣室温度が考慮されます。固体領域(机,ラジエター,外壁)との境界面には接合境界条件が,これら以外の内壁には断熱条件が課されます。
図1 解析モデル
解析結果
流線
図2に流線を示します。ヒーターによって暖められた空気は密度が小さくなるため,ヒーターから上方に向かって流れが発生します。上方に向かった空気は,天井に沿って室内に広がります。しかし,流れは室内の下部空間まで到達していないことがわかります。また,ふく射モデルの考慮の有無によって,ラジエター上部の流れに違いが生じています。
(1)ふく射モデルあり (2)ふく射モデルなし
図2 流線
温度の等値面
図3に温度分布(等値面は288Kら294Kまで1Kきざみ)を示します。室内では,ヒーターで暖められた空気の温度成層が形成されています。ふく射モデルを使用した場合,ヒーター背後の壁面に高温となる領域が発生しています。ところが,ふく射モデルを使用しない場合,ラジエターによる熱ふく射が考慮されないため,壁面温度だけではなく室内の温度分布にも違いが生じています。
(1)ふく射モデルあり (2)ふく射モデルなし
図3 温度分布
ふく射熱流束
図4にふく射熱流束分布を示します。室内で最も高温であるヒーターでは熱ふく射による放熱が発生し,ヒーターからの熱ふく射の影響はヒーター近傍で最も大きくなっています。また,室内壁やドアにもヒーターからの熱ふく射の影響が確認できます。
図4 ふく射熱流束分布