電子部品へのポッティングにおける気泡のトラップ
1. 解析モデルの説明
電子機器の筐体に樹脂をポッティングする際に、成形条件によっては、搭載部品の隙間や基板の背面等に空気が残留し、溶融樹脂内に空気が気泡としてトラップされてしまう成形不良(エアートラップ)が発生してしまうことがあります。
流体解析で空気の残留状況を精度よく再現するためには、樹脂の流動だけでなく、VOF法等の気液界面の追跡が可能な計算手法で、空気の流動もきちんと解くことが重要になります。そこで、OpenFOAMのVOF法のソルバーを用いて、気泡のトラップ状況を確認しました。
図1にモデルの概要図を示します。エアートラップの回避には、ノズルの位置、製品の傾き(=重力方向)、ベントの設置等が重要になりますが、本モデルでは、ノズルの位置を固定し、製品の傾きを変えた条件でエアートラップの発生状況を比較しました(ケース1:傾き0度、ケース2:傾き8度)。
2. 解析条件
図2-1に各計算ケースの傾き具合を、図2-2に樹脂の粘性係数を示します。
一般的に、ポッティングする樹脂材料としてはウレタンやエポキシ樹脂が使用されますが、本事例ではシンプルにPowerLawモデルで粘度特性を定義しました。なお、熱硬化性樹脂のポッティングの解析事例は、以下をご覧ください。
3. 解析結果
図3に、代表時刻における樹脂の充填の様子を示します。
図3-1. 代表時刻における樹脂の充填の様子(視点斜め上方向)
図3-2. 代表時刻における樹脂の充填の様子(視点斜め下方向)
ケース1では、界面上昇に対して基板が平行なため、基板背面に多数の気泡がトラップされる結果となりました。一方、ケース2では、基板が傾いているため、基板背面の気泡が移動しやすい事に加え、基板に対して斜めに界面が上昇するため、気泡はトラップされ難い結果となりました。
4. まとめ
OpenFOAMのVOF法のソルバーinterFoamでポッティング解析を行うことにより、エアートラップを再現することができます。計算条件を変更することによって、成形不良を回避する成形条件を検討することができます。