1. 概要
モータードライブ回路を解析した事例を紹介します。PSIMでは様々なモーターのデザインテンプレートが用意されていますが、ここではPMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor)を用いた例を説明します。
2. PMSMドライブ回路
図1にPMSMドライブ回路の例を示します。直流電源、インバータ、PMSMモデル、負荷で構成されています。
図1 モータードライブの回路
PSIMでは、PMSMモデルについても様々なデザインテンプレートが用意されています。例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モーターとSPM(Surface mounted Permanent Magnet)モーター、速度コントロールとトルクコントロール、理想モーターとFluxモーター、などです。理想モーターとFluxモーターを比較すると、前者では線形のモーターパラメータが用いられてインバータースイッチングによるトルクリップル効果のみが考慮されますが、後者ではAltair Flux[1]やAltair FluxMotor[2]から生成される非線形のモーターパラメータが用いられ、空間高調波、コギング トルク効果、銅損、コア損、渦電流損、ヒステリシス損などの非線形効果が全て考慮されます。理想モーターは計算速度が速いためシステムレベルの検討に適していて、Fluxモーターは現実的なモータードライブ システムのパフォーマンスを評価するのに適しています。
[1] Altair Flux:低周波電磁場を解析対象としたソフトウェア。磁場、磁場による力、モータトルクなどの解析が可能。
[2] Altair FluxMotor:電気モーターの基本機能設計に特化したソフトウェア。電気モーターモデルの効率的な作成が可能。
3. FluxMotorモデルを用いたドライブ回路
図2にFluxMotorモデルを用いたドライブ回路の例を示します。直流電源、インバータ、PMSMモデル、負荷に加え、モーターコントローラーの詳細が表示されています。
図2 Fluxモーターモデルを用いたドライブ回路
図3にFluxMotorモデルとそのパラメータを示します。FluxMotorモデルでは、銅損、コア損、渦電流損、ヒステリシス損、トルクを出力する端子が設定されています。FluxMotorモデルのアイコンをクリックするとパラメータウィンドウが開き、設定されているパラメータを確認することができます。ここでMotor Data FileにはFluxまたはFluxMotorで作成したモーターデータファイル(.matファイル)を指定します。PSIMはモーターデータファイルから、磁束、トルク、インダクタンス (Ld、Lq) などのモーターパラメータのLuT(LookUp Table)を読み取ります。モーターデータファイル(.matファイル)の取得方法については、文末をご参照ください。
図3 FluxMotorモデルとそのパラメータ
4. 計算結果
図4(a)~(f)に計算結果(モーター電流、回転数、トルク、LdとLq、銅損とコア損、渦電流損とヒステリシス損)を示します。
図4(a) モーター電流
図4(b) 回転数
図4(c) トルク
図4(d) LdとLq
図4(e) 銅損とコア損
図4(f) 渦電流損とヒステリシス損
5. まとめ
FluxMotorで作成したモーターデータファイルを用いたドライブ回路をPSIMにより計算し、モーター電流、回転数、トルク、損失などを算出しました。
[参考] モーターモデルファイル(.matファイル)を取得する手順
FluxMotorで.matファイルを作成する手順を簡単に示します。詳細はAltair PSIMのチュートリアル"How to Generate LuTs for PMSM (Flux and FluxMotor) Models"をご参照ください。