1. 概要
高周波モデルを用いたPMSM[1]ドライブ回路においてノイズの影響を解析し、次にEMI[2]フィルタを付加してノイズ低減の効果を確認した事例を紹介します。
[1] PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor): 永久磁石同期電動機
[2] EMI(ElectroMagnetic Interference): 電子機器から発生して他に妨害を与える事や物、輻射ノイズや伝導ノイズなど
2. 高周波対応のPMSMドライブ回路
図1に解析対象とするPMSMドライブ回路のモデルを示します。本モデルは次のような高周波対応が施されています。PMSMモデルはディファレンシャルモードとコモンモードのEMIノイズを計算することができる高周波モデルです。インバータには各IGBTのエミッタの寄生インダクタンスLeとコレクターグランド間の浮遊キャパシタンスCc_hが設定されています。インバータとPMSMを結ぶ3相交流ケーブルには図2(a)に示す等価回路で表現されるの伝送線路モデルが設定されています。インバータのコモンモード電流①②と3相交流ケーブルのコモンモード電流③が図2(b)に示すように合計されて出力されます。
図1 高周波対応のPMSMドライブ回路
図2(a) 3相交流ケーブルの等価回路
図2(b) コモンモード電流
6. コモンモード電流スペクトルの比較
図3(c)と図5(c)のコモンモード電流をフーリエ変換して算出したスペクトルをそれぞれ図6(a)と図6(b)に示します。各図にはCISPL25[4](Class3[5])の限界値を合わせて示しています。図6(a)のスペクトルは限界値を超えている周波数帯がありますが、図6(b)のスペクトルは限界値を超えている周波数帯はありません。したがって、この事例ではEMIフィルタを付加することによってCISPL25(Class3)をクリアできるということになります。
[4] CISPR25: 自動車のEMI規格のこと、ここでCISPR(Comité international spécial des perturbations radioélectriques 仏語)は国際無線障害特別委員会を意味します
[5] Class3: CISPR25の規格は最も緩いClass1から最も厳しいClass5まで5段階の限度が示されています
図6(a) EMIフィルタなし
図6(b) EMIフィルタあり
7. まとめ
高周波モデルを用いたPMSMドライブ回路を解析し、ノイズの影響が顕著であることを示しました。次にこのPMSMドライブ回路にEMIフィルタを付加して解析し、ノイズを大幅に低減できることを示しました。