回路と熱の連成解析

回路と熱の連成解析

1. 概要

 回路解析と熱解析の連成解析の事例を紹介します。回路解析にはPSIMを使用し、熱解析にはSimLab[1]を使用します。

[1] SimLab : 大規模なアセンブリモデルを効率的に作成できる汎用プリ・ポストシステム。多くのCADツールやソルバーのインターフェースに対応しインポート/エクスポートが可能。構造解析、振動解析、熱流体解析、樹脂流動解析、電磁場解析のソルバーとシームレスな連携ができます。本事例では、熱流体解析ソルバー Altair Electro Flo 3D CFD と連携します。

2. 解析モデル

 図1にSimLabの解析モデルを示します。PCB、2つのコンポーネント、ヒートシンク、ファンで構成されています。コンポーネントで発生した熱がPCBやヒートシンクに伝わりファンにより空冷されるモデルです。

図1 SimLabの解析モデル

 図2にPSIMの解析モデルを示します。2つのMOSFET[2]からなる同期バックコンバータです。MOSFETはスイッチとして動作しますが、ON抵抗によって損失が生じジュール熱が発生します。

[2] MOSFET : Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのこと。

図2 PSIMの解析モデル

3. 連成解析の方法

 回路と熱の連成解析の方法を説明します。あらかじめ連成させるPSIMのエレメントとSimLabのボディの名称を同一にしておく必要があります。本例では、図3に示すようにQ1とQ2という名称を設定しています。また、PSIMにおいてMOSFETのモデルレベルをThermal(MOSFET(Eon))にしておく必要もあります。

図3 エレメントとボディの対応

 データの送受プロセスのイメージを図4に示します。初めに任意の温度条件でPSIMの回路解析を実行します。するとMOSFETのQ1とQ2で発生する熱量Qが出力されます。次にこれらをSimLabのコンポーネントのQ1とQ2の熱源として、熱流体解析ソルバー Altair ElectroFlo 3D CFDにより、ファン冷却、ヒートシンク伝熱を考慮した熱解析を実行します。するとコンポーネントを含むSimLabモデルの温度分布が出力されます。次にコンポーネントのQ1とQ2の温度をMOSFETのQ1とQ2の温度条件としてPSIMの回路解析を実行します。すると再度MOSFETのQ1とQ2で発生する熱量Qが出力されます。このプロセスを収束するまで反復して実行します。なお、SimLabによる熱解析で必要な事前処理、境界、材料、冷却の各条件等についてはこの事例では省略します。

図4 データの送受プロセス

4. 解析結果

 連成解析の結果を示します。PSIMにおけるMOSFETのQ1とQ2の温度変化を図5に示します。ステップは前項で説明したプロセスの反復回数を意味します。第7~第8ステップで収束していることが確認でき、Q1とQ2の温度はそれぞれ51.1℃と49.4℃です。

図5 温度変化

 第8ステップでのSimLabモデルにおける温度分布を図6に示します。熱源であるコンポーネントとそれに接触するヒートシンクの温度が高いことが確認できます。

図6 温度分布

5. まとめ

 回路解析にPSIMを使用し熱解析にSimLabを使用して回路と熱の連成解析を実行しました。これにより、PSIMモデルのMOSFETの温度変化とSimLabモデルの温度分布を算出し可視化しました。

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