CAE Q&A
  ~動的陽解法のメリット~

CAE Q&A<br>  ~動的陽解法のメリット~

CAE Q&A  ~動的陽解法のメリット~

CAEの実務に役立つ技術情報をQA形式で解説するコーナー



Question:

LS-DYNAで塑性加工問題を扱うとき、静的陰解法ではなく、動的陽解法で解くことにはどのようなメリットがありますか?

Answer:

 最初に、静的陰解法、動的陽解法について整理しておきましょう。

 静的陰解法では(1)剛性マトリックスを変位ベクトルの係数とした大規模な連立一次方程式を解き、(2)非線形の釣り合いを保つための収束計算を行う必要があります。ここでいう非線形とは、材料非線形性(弾塑性材料など)、幾何学的非線形性(大変形)、境界条件非線形性(接触など)です。これらを含めてつり合いを保つために計算ループが多重化され、計算コストが大きくなります。

 一方、動的陽解法では、(1)の代わりに、慣性力を含む運動方程式を質量成分で力成分(構造内力や減衰力など)を除して加速度を求め、中心差分法で直接時間積分を行い、速度及び変位を更新し、ひずみと応力を計算して現在時刻での物理量を算出します。質量成分には対角化された質量行列が用いられるため、各質量に対する方程式は互いに独立し、連立一次方程式を解くことなく、つまり連立方程式の求解計算(収束計算)を行なう必要がなく、解が得られます。



 しかし、この手法は無条件安定ではなく、解が発散する恐れがあります。この対策のため、誤差の蓄積を抑えるように、時間積分の時間増分Δtを十分に細かくとり、精度を保証しています。この対策が上記の(2)に相当します。

 以上をまとめると、動的陽解法は次のメリットがあります。

 (A) 大規模な連立方程式を解かないため大規模モデルに適している
 (B) 収束計算を行わないため、プレス成型や鍛造など複雑な接触を含む問題においても安定して解を得ることができる
 (C) 安定して解が得られるため、解析終了時刻の予測ができる

 これにより、解析条件や解析パラメータを変更して解析する実行回数を見積もることができ、業務の工程に組み込んで作業を進めることができます。このようなメリットがあるため、LS-DYNAではプレス成形や鍛造などの塑性加工問題を動的陽解法で解いています。静的陰解法では収束計算にかかる計算時間を予測しにくく、業務に組み込むことが難しい場合があります。





関連記事/関連ページ


LS-DYNA技術セミナー
LS-DYNA紹介ページ