熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いた熱流体解析
樹脂流動解析ソフトの多くはストークス方程式を解いており、解析条件によっては実際の充填状況がうまく再現されないなどの制限があります。ナヴィエ-ストークス方程式を解く熱流体解析ソフトに粘度モデルを追加することで、実際の流動現象の再現性が大きく高まります。
1. 射出成形シミュレーションソフトについて
流体解析の中でも樹脂の射出成形は粘度モデルや成形条件が特殊であるため、これらの機能が組み込まれた専用の射出成形シミュレーションソフトが多く販売されています。
射出成形シミュレーションソフトの多くは、計算時間を短縮する工夫が組み込まれています。
一般的に流体計算では、流体の運動を記述するナヴィエ-ストークス方程式内に非線形を表現する移流項が存在するため、収束計算に時間がかかり計算時間が長くなります。以下に、保存系-非圧縮のx方向ナヴィエ-ストークス方程式を示します。
射出成形で広く利用されている熱可塑性樹脂は粘度が高いため、薄肉の型内を流れる際は、圧力勾配が流れ場を決定します。
圧力勾配が支配的な流れでは、移流項を無視しても計算結果には影響を与えないため、射出成形シミュレーションソフトの中には、計算時間を短縮するために、移流項を削除し簡略化した定式化(ストークス方程式)を行っているソフトも存在します。
射出成形シミュレーションソフトの多くは、計算時間を短縮する工夫が組み込まれています。
2. 射出成形シミュレーションソフトの問題点
一方で、成形条件によっては、ストークス方程式では再現できない場合も存在します。例えば、高さのある型に樹脂を流し込む場合や粘度が低い樹脂を利用する場合です。高さのある型では重力により粘度が高くても圧力勾配が支配的とはならないため、移流項の影響が無視できなくなります(下図参照)。
また、粘度が低い樹脂では、薄肉の型内を流れる際も圧力勾配が小さく、移流項の影響が無視できなくなります。このため、一般的に粘度の低い熱硬化性樹脂の成形解析を行うためには、移流項を解いている汎用の流体解析ソフトを使った方が、流れ場を精度よく再現できる事になります。
3. 射出成形シミュレーションソフトの問題点
熱硬化性樹脂の成形解析を行うためには、硬化反応の進行状況によって粘度が変化する特殊な粘度モデルが必要になります。汎用の流体解析ソフトには、この様な熱硬化性樹脂特有の粘度モデルは組み込まれていないため、ユーザ自身で粘度モデルを追加する必要があります。硬化反応の進行状況を示す反応率(反応速度)はKamalモデルを、反応率に応じた粘度変化はMacoskoモデルなどを主に利用します。
また、この反応速度の式に光照射によるエネルギー増加分を加える事で『光硬化性樹脂』の流動計算を行う事もできます。
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