AcuSolveによる流体騒音解析
Altair AcuSolve(以下、AcuSolveと表記)は有限要素法を用いた汎用熱流体解析ソフトです。
AcuSolveはFWH法に基づく音の伝播解析機能を備えているため、AcuSolveのみで流体騒音解析を完結することができます。
この記事では、AcuSolveによる流体騒音解析の手法の概要と特徴を説明します。
ファンの騒音、自動車のピラーやドアミラーの風切り音などをはじめとした流体騒音の低減化は工学的に重要なテーマとなっています。
この様な流体騒音は、空気中を伝播する波としての圧力変動(圧力変動波)により生じるため、原理的には、通常の流体解析と同様、Navier-Storks方程式と連続の式を解くことで解析することができます。
しかし、圧力変動波は流体の流れにより生じる圧力の中でも振幅が非常に小さく、高周波であるため、解析においては高い時空間解像度が必要となります。また、主音源から離れた箇所への音の伝播を解析したい場合、通常の流体解析よりも計算領域が広くなるため、一般的な流体解析ソフトでは現実的な時間で解析を行うことができません。
熱流体解析ソフトAcuSolveでは、まず主音源近傍の流れ場・圧力場を計算し、その結果を使って、波動伝播方程式:FWH(Ffowcs-Williams Hawking)方程式を解くことで主音源から離れた箇所への音の伝播を解析することができます。主音源から離れた箇所での流体計算が不要となるため、現実的な時間で音の伝播解析を行うことができます。
手順の概要は以下の通りです:
1. 流体解析を行う
2. 音源面(物体表面や物体を取り囲む面)を指定する
3. 観測点を指定する
4. FWH方程式を解き、観測点における音圧の時刻歴を求める
(音圧の時刻歴をフーリエ変換すれば音のスペクトル特性を求めることも可能)
このように、AcuSolveのみで流体解析から音響解析までを完結させることができます。
なお、FWH法による音の伝播解析の制約として、開放空間への音の伝播が対象となります。音の反射・吸収・回折等の存在する場合は、AcuSolveの流体計算の結果から音源項を出力し、伝播解析ソフト(ACTRAN等)を利用することにより解析が可能です。(ACTRANにはAcuSolveで出力した音源項を読み込むインターフェースが存在)
AcuSolve(+ACTRAN)による流体騒音解析の事例としては、風車の騒音伝播、芝刈り機の騒音伝播、軸流・シロッコファンの騒音伝播などがあります。
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