CFD解析における着色機能
1. 色素流脈法
流体の流れは見にくく、多くの場合、観察には困難を伴います。そのため、古くからさまざまな可視化実験手法が研究されています。その中の一つである色素流脈法は、色素を流体中に投入し、色素の広がりを観察して流れを可視化するものです。この方法はCFD解析の着色機能に応用されています。
2. 支配方程式
CFD解析では、色素濃度は流体要素のスカラー属性として表現します。よって、解析領域内の色素濃度はスカラーの移流方程式を解くことで求まります。これをポスト処理することで色素の広がりをカラフルに表した分布図を作成できます。
3. 流体着色のメリット
流体を着色することによって、多くの情報が得られます。
例1 室内気流解析や槽内の水流解析において、流入口から着色した流体を流すことで、
対象領域内で気流や水流が淀んでいる箇所が特定できます。
回転ロール槽内の流体計算事例です。流入口から色素を含む流体を流し込んでいます。コンターは色素濃度の値を表しています。(赤が濃度の濃い場所を、青が濃度の低い場所を示す)槽内の色素濃度が上昇しない箇所では、流入口から流れ込んだ新鮮な流体が行き届かない事を意味します。
例2 攪拌解析において、撹拌槽内の一部に着色した流体を初期配置しておくことで、
攪拌状況を確認する事ができます。
色素濃度分布の時間変化から最適な翼形状の調査等にも役立てることができます。
攪拌解析の計算事例です。初期状態で攪拌槽の下半分の流体を着色しています。色素濃度の幅を攪拌指標とすることで、攪拌効率を確認することができます。
例3 流入口や流出口が複数配置された配管内の流れの解析において、特定の流入口のみ
着色することで、各流出口から排出される流量を確認することができます。
配管内の流れ解析の事例です。流入口Bから着色した流体を流し込んでいます。
定常状態において、流出口の色素濃度を確認することにより、各流入口から流し込まれた流体の排出量を算出することができます。