電磁場-流体連成解析の基礎

電磁場-流体連成解析の基礎

電磁場-流体連成解析の基礎

溶融金属やプラズマは電流が流れる導電性の流体です。電磁場中にあるこれらの流体を解析する場合、マクスウェル方程式を解く電磁場解析とナビエストークス方程式などを解く流体解析を組み合わせる必要があります。電磁場の影響を考慮した流体力学であり、電磁流体力学(magneto-hydro-dynamics:MHD)と呼ばれます。





電磁場-流体の連成解析

溶融金属に電磁場を付加すると、ローレンツ力などの電磁力が働きます。電磁場の大きさや与え方を工夫することで、流体の流れを制御することが可能です。この特徴を活かし、鋳造の工程では電磁ポンプや電磁撹拌による電気的な制御が行われています。流れ場が電磁場によって変動するため、普通の流体解析で予測することは難しく、電磁場解析との組み合わせが必要になります。

電磁場解析と流体解析の組み合わせ方には、主に2種類の方法があります。
1方向連成(one-way coupling)・・・電磁場から流体への1方向の連成
2方向連成(two-way coupling)・・・電磁場と流体の2方向の連成

1方向の連成では、例えば、電磁場解析で求めた各座標におけるローレンツ力を流体解析の外力項に体積力として追加し、流れ場を解く方法があります。
一方、2方向の連成は、自由界面がある場合が考えられます。ローレンツ力を流体解析に渡して流れ場を解いた後、変形した界面形状を電磁場解析に渡します。次ステップで変形した界面形状に応じた磁場分布の変動を解き、ローレンツ力を解いて流体に渡す、というサイクルを繰り返します。



ハルトマン流れ

電磁流体力学の理論解が得られている問題として、ハルトマン流れがあります。

平行平板を流れる導電性流体に垂直な磁場を与えると、ローレンツ力は流体の流れを妨げる方向に働きます。(図2)ここで、平行平板は無限に続き、磁場は一様、一定とします。ローレンツ力が妨げる方向になるのは、以下の理由からです。

①Z方向の定常磁場中を導体(自由電子)がX方向に一定速度で移動すると-Y方向に定常電流が発生する
②-Y方向定常電流はZ方向磁場により-X方向の力を受ける
③-Y方向定常電流が受けた力はその媒体である導体に伝わる

磁場を大きくしていくと、ローレンツ力が大きくなり、流れが抑えられる形に流速分布が変化します。



流速分布はハルトマン数と呼ばれる無次元数(1)式に依存します。


流速分布の理論解は(2)式となります。グラフで示すと図3です。


ローレンツ力の理論解は(3)式となります。グラフで示すと図4です。




OpenFOAMによるハルトマン流れの検証

流体解析ソフトOpenFOAMを用いてハルトマン流れを検証した例を紹介します。 電磁場解析についてはここでは省略し、流体解析についての検証を紹介します。
それぞれのハルトマン数におけるローレンツ力を外力として与えられるカスタマイズを行い、流体解析を行った結果を図5~図8に示します。図中の青い実線は理論解(Theory)、赤点線は解析結果(calc)を示しており、両者はよく一致しています。

ハルトマン数が0の結果は磁場がないため、平面ポアズイユ流れに相当します。磁場を大きくするに従って流速が速いところほど抑えられる形となり、ハルトマン数が10の結果では、中心部分の流速が小さく平らな流速分布を示します。







今回の例題では、電磁場解析は行わず理論解を用いましたが、電磁場解析で得られたローレンツ力を利用することもできます。静磁場の場合は手計算で求められることもありますが、コイルで変動する電磁場を解く場合は電磁場解析が必要になります。



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