OpenFOAMによる非定常の攪拌解析
OpenFOAMを利用した攪拌解析の事例を紹介します。OpenFOAMはGPLに準拠したオープンソースのフリーソフトです。ライセンス料が不要で、攪拌解析など大規模な非定常計算ではコストメリットが際立ちます。
1. 非定常解析による攪拌条件の調査
一般的に、実験をベースに適切な攪拌条件を求める場合、試作機(モックアップ)で条件を確認した後に実機ベースで動作検証を行うと、サイズの違いによるスケールアップの問題が発生します。一方、シミュレーションでは実機サイズの計算モデルを用いればスケールアップに伴う問題を気にすることなく攪拌条件の検討が行えます。また、液体を着色し、時々刻々と変化する槽内の攪拌状況や死水域の有無を視覚的に確認できるため、攪拌状況の把握が容易になります。吐出流量など、実験では計測しにくい物理量の把握も容易になります。このように、シミュレーションの併用は多くのメリットがあります。
非定常の攪拌解析では、スライディングメッシュを用いて長時間の層内流動を追いかけます。物理現象の時間が長くなると計算時間が長大化し、計算の並列化を検討する必要が出てきます。並列計算用のライセンスは追加コストがかかる場合が多く、定常解析で槽内の流況を推測するなど並列計算を行わない工夫も考えられますが、適切な攪拌条件を定常解析で調べるには経験が必要です。並列計算は現実的な選択オプションと言えるでしょう。
以下にOpenFOAMを利用した非定常の攪拌解析を解説します。
2. モデル説明
図1に攪拌槽のモデルの概要を示します。粘度の異なる2ケースについて(表1)非定常-3次元-非圧縮解析をおこないます。なお、攪拌の様子の可視化を容易にするため、液体に着色して計算します。使用したソルバーはOpenFOAM ver6のinterFoamです。
3. 計算条件
図2に計算条件を、図3に計算メッシュを示します。
4. 計算結果
図4に、代表時刻における中心断面の攪拌の様子を示します。撹拌層の上半分の液体を青に、下半分の液体を赤に着色して計算を開始しています。緑は均一に混ざった液体を表します。
図4から、粘度の高いケース1では、80秒を経過しても液体が混ざっていない領域が存在するのがわかります。一方、粘度の低いケース2では、80秒を経過した時点で、ほぼ均一に混ざっている事が確認できます。ただ、軸の近傍には攪拌が不十分な青い領域がみられます。
図5に各ケースのアニメーションを示します。
ケース1
ケース2
図6に、代表時刻における中心断面の流速を、図7に代表時刻における翼表面の圧力を、表2に吐出流量とトルクを示します。
ケース1
ケース2
ケース1
ケース2
5. まとめ
フリーソフトのOpenFOAMを用いた非定常の攪拌解析例を紹介しました。
当社ではOpenFOAMによる攪拌解析の手順 (CADモデル・インポート、メッシュ作成、解析モデル作成、計算実行、結果処理)が実習形式で学べる『 OpenFOAM養成講座・実践コース ~ 攪拌解析編』を開催しています。
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