AIによる立木倒伏方向の予測

  • 2025.02.21
  • AI
AIによる立木倒伏方向の予測

下記の動画に、事例:立木の伐倒解析のアニメーションを示します。立木の切れ込み部分に、クサビを模したシェル(赤)を挿入し、そのシェルを持ち上げて立木を倒伏させる解析をLS-DYNAで行っています。右側のアニメーションでは、倒伏に伴い切れ込み部のソリッド要素が破断する様子を確認できます。破断は上部の切れ込み(追口)から、45°の切れ込み(受口)に向かって進展しています。この破断箇所を「ツル」と呼び、立木の倒伏方向はツルの断面形状に依存することが知られています。

 

倒伏に伴うツルの破断

本事例では、Altair Physics AIを用いて立木の倒伏方向をAIで予測しました。Physics AIは、CADやメッシュの形状をインプットとして、変形や3Dコンターを予測するソフトウェアです。今回の事例では、インプットとしてツルの断面形状(2D)を使用し、倒伏角を予測しました。倒伏角とは倒伏の偏角を指し、まっすぐ倒伏する場合は倒伏角が0°となります。以下の図にAIモデル構築のプロセスを示します。まず、学習データとしてツル断面形状(2D)と、LS-DYNAによる倒伏角の計算結果をセットにしたデータを4パターン用意しました。これらをPhysics AIに学習させ、未知のツル断面形状を入力した際に倒伏角を予測するAIモデルを構築しました。

予測モデル構築のプロセス

今回は学習データの数が限られていたため、以下のような精度検証を実施しました。下表のパターン1〜4の検証では、例えばパターン1の場合、学習データとして①②④を使用し、精度検証として③を用いてLS-DYNAの計算結果との誤差を評価しています。パターン2〜4についても同様に評価しました。学習データが少なく十分な検証ではありませんが、おおむね誤差は0.2〜0.3°程度であり、この程度の誤差を許容できる場合は、比較的良好な予測精度であると言えます。

AIによる伐倒解析
精度検証結果

下表にLS-DYNAとPhysics AIの計算時間の比較を示します。立木の伐倒解析は非線形性が強く、また解析対象の現象時間が長いため、LS-DYNAではクラスターマシンを使用しても1解析あたり60時間以上を要します。一方、Physics AIでは学習に約10分、予測は数秒で完了します。計算コストの大きい解析においては、AI構築によるメリットが非常に大きいことが分かります。


計算時間の比較

 

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