従来のCAEを用いた見込み金型形状の予測には、解析モデルの作成、解析の実行、結果の評価といった作業が必要で、多くの工数が発生していました。こうした手間が、金型設計のスピードを上げる上で大きな課題となっていました。こうした背景から、AIは設計スピードを加速させるために欠かせない技術となりつつあります。
ここでは、PhysicsAIを活用したプレス成型の金型見込み予測の事例についてご紹介します。図1には、金型見込み予測AIの概要を示しています。成形品の形状、ブランク材のヤング率や降伏応力、板厚などの情報をPhysicsAIに入力すると、ブランク材のスプリングバック量を考慮した金型形状が予測されます。
図1 physicsAIによる金型予測AIの概要
図2に、学習データに関する概要を示しています。スプリングバック後のブランク材の形状および物性・板厚と、上型・下型の形状データセットを用意します。ここでは、Ansys LS-DYNAを使用し、V字の角度が異なるデータセット5件を学習データとして使用しています。今回はCAEの解析データを学習データとして使用していますが、実機の3Dスキャンデータを活用することも可能です。
図2 V字曲げ加工の学習データの準備
図3の右側には、新規ブランク材形状に対して予測された金型見込み形状を示しています。予測された見込み角度は163.6°であり、LS-DYNAで計算した金型角度162.0°と比較して、良好な精度で予測できていることがわかります。
図3 V字曲げ加工の金型見込み角度予測
同様に、図4ではハット曲げ加工についても、金型見込み形状を予測しています。加工後の形状をphysicsAIに入力することで、金型見込み形状を予測しています。
図4 ハット曲げ加工の金型見込み形状予測